JIBT攻略のための秘訣とは?
目次
釣り好き子供がビルフィッシャーへ
東京都八王子市でタックルショップ「フェニックス」を営む森部秀夫未さんは、カジキ釣り用のジャパニーズ・カスタムルアーの草分けともいえる人。JIBTにもごく初期から参戦されている氏に、お店で話を伺いました。
釣りが身近な少年時代
親戚が西伊豆の戸田にいましたから、私は歩ける前から伝馬船で竿なしの手釣りをやっていたらしいです。自宅の中にも池があって、親父がコイなんかを泳がせて釣りをさせてくれました。このあたりにも釣り堀がたくさんありましたし、川にもハヤだとかオイカワとか、いくらでも魚はいました。子供の頃から、釣りが身近にあったんです。
カジキ釣りに関わる情報量の大事さ
オーナーキャプテンとしては第7回大会から出ていますが、良い成績を収めることができたのは、情報量の違いが大きかったと思います。漁師さんととっても仲良くさせてもらっていましたし。昔は水温データなし、GPSデータなし、っていう時代ですから、現場の情報なしでは的が絞れませんでした。フネには水温計がもちろん付いていますが、どっちに行けばもっと良い条件になるかはわからないんで突きん棒漁師がいるところを探したりしましたね。
ボートの今昔
昔のフネですと、三宅島は2日泊まりでないと行く気がしなかったですよ。でもボルボのペンタエンジンを積んだヤマハのPC30という30フィートのフネに替えると、速度も36ノットは出ましたし、500リットルタンクを750まで容量拡大してありましたから、航続距離も伸びました。ブルーマーリンクラブというチームでカジキ釣り大会に出場するようになったのも、三宅島での2回目大会からですね。最初の頃は、出場してくるボートも16フィートとか、14フィートっていう時代ですね。そんなフネですと大島まで行くのも怖かったです。
人徳丸さんに教わる
最初の頃、クロカジキは130ポンドっていうのが常識だったらしく、細い50ポンドラインを使うチームは珍しがられました。人徳丸さんの田中船長と仲良くなった頃、「おまえたちは金がないのか? リールがやけに小さいが……」と言われましたよ。田中さんには、ファックスで入ってきた黒潮情報を見せて「こんな感じならどこへ行けばいい?」とよく問い合わせをしていました。場所の選定理由はなかなか教えてくれなかったんですが、結果的に勉強になりましたね。
ルアーメーカーとして
私が作るルアーはバランスを最重視してます。特にルアーが縦に振る動きを意識してます。ただしそれほどバリエーションは要らないと思っていて、たとえばちょっと荒れていてルアーが飛んじゃうなあと思えたら、普通なら800 RPM で行くところを 20 とか 30 RPM 落とすくらいでいいんです。当たりルアーを隠す人もいると思いますが、私はぜんぶオープン、「これが食いますよ!」って教えちゃいます。ルアーのテストをしている頃は、フネに200個くらい積んで試していましたね。
カラーの傾向と信念
ヘッドの形とルアーの色、どっちが決定的に大事かという話はよくありますよね。最初は圧倒的にヘッド形状だと思っていたのですが、やはり色も大事だと思っています。春の潮はグリーンがかっていますけど、そういう時はグリーンが釣れます。夏の潮はブルーが強くなってきますから、ルアーも合わせます。シイラがいるからグリーン/イエローが釣れる、っていうわけでもないみたいです。ただし、潮の色とはぜんぜん違うパープル/レッドも釣れますよ。カジキって、釣れないと思ったら釣れないんです。初心者の方でも信じて、みんなと同じ場所でやればいいんです。本来釣れない時間に引っ張って、飽きて、良い時合いの時に他の釣りに浮気したりするのがいちばんだめです。「カツオ釣りをするとカジキが釣れない」ってよく言われたのは、そんな意味なんでしょう。
ハイテクに頼りすぎない組立て
JIBTに出るときは、前日に下見をして、よさそうなところに当たりを付けておきます。ベイトがいるところと深さを確認し、釣り方を想定するわけです。潮が効いているところほどベイトは深いですから、まず200m線を基本に考え、潮が普通より速ければもっと深い場所を流します。ユルユルの潮だと、100mを切ったところでも食いますよ。他のフネが当たっている場所の深さは、気にして見ています。私のフネにソナーは付いていないのですが、「なんでそんなにベイトのいるところを結んで往復できるの?」って驚かれます。魚探でベイトの群れを見つけたら、別の群れと線で結び、進む角度を設定して往復するだけなんですけどね。GPS も、私はなくても釣りができます。水深が分かる海図があり、地形を見てヤマ立てができ、レーダーで距離を測ることができれば大丈夫です。
最後に
JIBTって日本最大のカジキ釣りトーナメントですから、各地から腕利きが集まってこられますよね。そこでしか会えない人たちもたくさんいらっしゃいますから、出会いを大事に、楽しく仲良くやっていきたいです。
取材・テキスト
東 知憲